Webブラウザ:Firefoxの発展
執筆者:Greg DeKoenigsberg
1998年1月22日、Netscape Communications, Inc.は、主力製品であるNetscape Communicatorのソースコードを公開する方針を発表しました。この新しいプロジェクトには、Mozillaというコードネームが付けられました。Mozillaを作成するNetscapeの意図は、その日のプレスリリースで述べられているように、「インターネット上の何千人ものプログラマが生み出す最良の拡張機能をNetscapeのソフトウェアの将来のバージョンに取り入れることによって、彼らの創造力を活用すること」にありました。
その会社、Netscapeは、そうした構想を実現させることはありませんでした。Internet Explorerを無料でWindowsと共に配布するMicrosoftの能力に圧倒され、Netscapeの市場シェアと収益は落ち込みました。Netscapeが1998年11月にAmerica Onlineに買収されるまでに、Internet Explorerはブラウザ市場で誰もが認めるリーダーとなり、それが永久に続くようにも見えました。
Mozillaプロジェクトは、自らの道を模索してもがき苦しみました。Mozillaは、一度にその全体像が公開された初めてのプロジェクトであり、そのコードが大量で、外部の開発者がただちに形のある貢献をすることは困難でした。最初の数カ月は、新しいMozillaのコードベースをとにかく動作させることそのものが課題でした。プロジェクトを指導していたJamie Zawinskiは1999年の早い時期に失意のうちに辞職しましたが、その公開された有名な辞表の中で、彼はMozillaチームが困難を通じて学んだ多くの教訓を1つ1つ列挙しました。「オープンソースは確かに機能する」と彼は最後にまとめましたが、「しかし、万能薬ではないことはいうまでもない」。
2004年11月9日、NetscapeがAOLに買収されてから6年後、非営利のMozilla FoundationがMozilla Firefox 1.0 Webブラウザのリリースを発表しました。それから3カ月で、Firefoxのダウンロード数は1,700万回を超えています。同時に、Internet Explorerは常にセキュリティ問題を伴っているため、米国土安全保障省はIEの全面利用を避けるように推奨しています。ここ数年で初めて、Microsoftが最終的にはブラウザ戦争に勝てないかもしれない、そんな様相を呈してきています。
Chris Blizzardは、1998年からRed Hatに勤務しています。彼はMozilla Foundationのボードメンバーでもあります。彼に、めざましく表舞台に復活したMozillaについての考えを聞きました。
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Red Hat Magazine: Red Hatでのあなたの役割を教えていただけますか?
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Chris Blizzard: 現在、私はRed Hatのデスクトップグループで働き、Webブラウザソリューションのサポートと販売促進を行っています。ここには、Red Hatが提供している製品の中でのWebブラウザの役割と重要性が理解されるようにすること、およびRed Hatのリリースの一部としてブラウザ製品を直接サポートすることが含まれます。それはまた、時にはソフトウェア開発を行って重要な統合部品をブラウザに組み込み、Red Hatユーザが我々のプラットフォームでブラウザを使用する際に最高の環境を利用できるように保証することでもあります。
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RHM: mozilla.orgへの関わり方について教えていただけますか?
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CB: Mozillaプロジェクトには、Red Hatでの仕事よりも長くたずさわっています。1998年にNetscapeがブラウザのソースコードを公開すると、私はすぐにそれを検討し、開発に取り組みました。オープンソースデスクトップに対するブラウザの重要性がわかっていたからです。
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その過程では、ウィンドウシステムをより現代的なツールキットに移植するため、C++、X Window System、motif、それにgtkについて学ぶ必要がありました。その作業と他の2人の作業の結果として、我々はようやくMozillaをLinux上で、そのデスクトップの一部としてうまく動作させることができたのです。
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RHM: それがRed Hatに雇われた理由だったのですか?
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CB: Red Hatが私を雇ったのはサポート部門の仕事をするためで、次世代のサポートツールの開発を促進するためでした。つまり、私がやっていたMozillaの仕事とはまったく無関係でした。
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結局、私はRed Hatで内部のサポート部門の1つから開発部門に移りました。それはRed Hat Advanced Development Labの一部で、そこでMozillaブラウザにフルタイムで取り組むことになりました。そこにいる間、私はMozillaの仕事を続け、アップストリームリリースの管理とRed Hatのブラウザパッケージの開発に力を割きました。
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RHM: 現在はどのようにmozilla.orgに関わっているのですか?
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CB: 以前のようにコーディングやリリースの管理などはしていませんが、実はMozilla Foundationの理事会に参加しています。Mozilla Foundationは、Mozillaプロジェクトとその派生プロジェクトを促進するために設立された非営利法人です。
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また、私は現在Mozilla Foundationで働いている開発者やマネージャの多くと緊密な連絡を保っています。
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RHM: mozilla.orgではリリースの管理を行っていたのですか?
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CB: mozilla.orgでのリリースは、実際には1人の人間によって運営されてきたわけではありません。ある人たちがほかの人たちよりも大きな影響力を持っているのは事実ですが。リリースを推進するために集まるグループがあり、それはリリースの管理を行う「ドライバ」と呼ばれていました。彼らがバグのカウントを記録し、重大なバグが修正されるように保証し、プログラムが正しく機能するように保証していたのです。
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RHM: 簡単にいうと、MozillaブラウザとFirefoxブラウザにはどんな違いがありますか?Internet Explorerに対抗するうえでFirefoxの方が優れている点はどこですか?
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CB: Firefoxの基盤テクノロジの多くはオリジナルのMozillaスイートと同じですが、さらに洗練されて今までのMozillaに比べてはるかに優れたユーザ環境を実現しています。Firefoxでは明確にセキュリティと簡潔さに重点を置いており、Webがさらに身近なものになります。
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RHM: では、Firefoxは、おおむね同じコードベースで作られているのですか?
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CB: そのとおりです。Firefoxの部品の大部分は同じです。ネットワーキングとほとんどのWeb機能を処理する基盤テクノロジだけでなく、Webページのコアレンダリングエンジンも同じです。違いがあるのは、Webの一部の機能(ウィンドウのサイズ変更が可能なポップアップやWebページなど)を処理する方式です。また、UIも使いやすさを重視して最初から作り直されています。
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RHM: ブラウザプロジェクトの名称がFirefoxに変更されたのはなぜですか?
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CB: かつてのMozillaと新しいFirefoxには明確な違いがあるということを明らかにする必要があったのだと思います。これは古いものに新しい名前を付けただけではありません。我々の信念、そして正しいテクノロジを使用すればWebがどれだけ快適になるかを明らかにする、ユーザへの新しい提案なのです。
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RHM: では、Mozillaはどのようなものだったと思われますか?そして、この「新しい提案」が必要となる理由は何ですか?
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CB: 実際には、Mozillaは昔のNetscape 4.xスイートを再生したものでした。数年ではそう大きな変化はなかったし、多くの人はユーザインターフェースが乱雑だと考えていました。Firefoxプロジェクト(当初の名称はPhoenixプロジェクト)は、99%のエンドユーザには不要と考えられるものをユーザインターフェースから一掃するための作業として始まりました。
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それはまた、テクノロジの実験場であり、実際には長い間行われていなかったブラウザ空間の革新を試みる場でもあると考えられていました。結局、Firefoxプロジェクトは、Webにはまだ積極的な変更を加えることが可能だということを証明するために必要だったのだと思います。
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RHM: Firefoxが「実験場」となった例を挙げていただけますか?
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CB: FirefoxのポップアップブロッキングはMozillaプロジェクトに含まれていた以前のコードから派生したものですが、それをデフォルトでオンにするために必要な変更を加え、また現在のようにうまく機能するところまで改良することは、Firefoxでのみ可能でした。
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また、ブラウザとしてのFirefoxは、多数の「エクステンション」のプラットフォームでもあることが重要です。これらのエクステンションには、2つの目的があります。第1に、パワーユーザは自分が必要とする機能をすべて追加でき、すべての人に同じ機能セットを持つことを要求しなくても済みます。第2に、それは開発者の実験を試行できることを意味します。エクステンションはときどきプロジェクトにフィードバックされ、プロジェクトの一部になります。
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Firefoxのエクステンションシステムは、大部分がMozillaで利用可能だったものに基づいていますが、それはより簡単に使用でき、またそれらのエクステンションを操作するツールも用意されています。昔のMozillaブラウザでMailコンポーネントのインストールを選択可能にしていたものは、だいたい現在のFirefoxでエクステンションのインストールに使用されているものと同じテクノロジです。それは、はるかに洗練されているというだけです。
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RHM: Firefoxブラウザの統合について、Red Hatにはどんな計画がありますか?
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CB: Firefoxは今までで最も成功したオープンソースプロジェクトの1つであり、Firefoxの関係者がユーザの経験を重視していることもわかっています。我々は今後もFirefoxをユーザのためにバンドルします。ユーザ環境を快適にすることは、我々自身の成功にとっても不可欠であることを理解しているからです。
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RHM: 現在1.0がリリースされ、大きな成功を収めていますが、次はどうなりますか?ロードマップはどのようなものでしょうか?
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CB: Ben(Goodger、Firefoxの主任技術者)が1.1リリースに関するものを何か自分のブログに書き込むと思います。
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RHM: かつてNetscapeはアプリケーションプラットフォーム全体の土台になるといわれていました。Firefoxの将来にもそういうことは予想できますか?
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CB: Firefoxは1つのブラウザですから、そんなことはありません。しかし、Mozillaプロジェクトに基づくより大きなプラットフォームになるかもしれません。Firefoxに取り組んでいる以上、それがどうなるかを考えはしますが、不完全な出荷できないしろものについて語るのは好きではありません。
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RHM: mozilla.orgとFirefoxとの関係で、何かほかのプロジェクトへの教訓となるようなことはありますか?
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CB: プロジェクトの周りに、それを支え、推進できるコミュニティを作る努力をすること。製品をできるかぎり普通の人が使いやすいものにすること。そして、自分の母親や祖母を対象ユーザとして想定することです。
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RHM: Microsoftを擁護する多くの人たちは、セキュリティ上の脆弱性は市場で圧倒的地位にあることの直接の結果だと言っています。「少し待てば、そのうち攻撃にさらされて対処しなければならなくなる」と主張する人たちに何か言うことはありますか?
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CB: 確かに我々も対処すべき攻撃を受けていますが、これまでのところ、IEをターゲットにした巨大な多様さと深さには達していません。ことの展開はまだこれからですが、我々はセキュリティを重視しており、アップデートを柔軟に提供できるので、今後もユーザのセキュリティ問題はより少なくて済むでしょう。
作成者について
Greg DeKoenigsbergは、Red Hatの対コミュニティを統轄するマネージャです。