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翻訳記事:

  • RED HAT Magazineは、米国発の記事を翻訳したものです。

RED HAT SPEAKS

Enterprise 2.0:流行の言葉、真の革命

原文(英語/2006年10月)

Webの時代には、「2.0」という言葉が意味するところは1.0です。2004年にO'Reillyによって導入された「Web 2.0」という概念は、広範囲のものを含んでいます。この言葉が新奇で革新的であるとみなされたものすべてに適用されるようになるまで、それほど時間はかかりませんでした。新しければ、それは2.0でした。

実は、Red Hatの技術者の間では、少なくとも1年前には「Web 2.0」という言葉を使うことが禁止されていました。その理由の1つは、Webが永久に1.0の状態にあることです。Webが仕上げられることは決してありません。おそらく、Webの状態を最も一般的にたとえるとすれば、アニメーションGIFの中で「建設中」の看板を出して永久にシャベルを振るう人のイメージが適切です。シシュポス2.0と呼んだ方がいいでしょう。(訳者註:シシュポスはギリシャ神話に登場する人物で、「徒労」のシンボル)

Web 2.0は、管理とコンテンツ作成の多くをコミュニティに任せるWebテクノロジを示す婉曲語になりました。そうすれば、ユーザはコンテンツを最も有用な形で編成できます。また、そのときどきのニーズに基づいて組み立たり分解したりできます。O'ReillyはWeb 1.0と2.0を比較して、それらの違いは、出版と参加の間にある相違にうまく対応すると特徴付けています。

Tim O'Reillyは、昨年、自分のブログでWeb 2.0という用語について弁明しました。「私の考えは偏っていたかもしれません。O'ReillyがWeb 2.0 memeの源であり、その最大の推進者の1つだったからです。しかし、それは現在の状況を正確に捉えていると思います。ゲームが変わったという事実に多くの人が気付いています。」

今年の出来事は、確かにそのとおりだったことを証明しました。

お気に入りのWeb 2.0はなんですか?広く普及したGoogleの検索機能などもそうではないでしょうか。
YouTube上でのビデオ製作の創造性とコミュニティもあります。また、RSSフィードとニュースリーダを併用して、コンテンツ全体を望みどおりに再編成する機能も挙げられます(自分で組み立てることができれば、複数のWebサイトを閲覧する必要がなくなります)。Digg.com、Del.icio.us、Technoratiなど、挙げていけばきりがありません。

しかし、その考え方は共通しています。それは、力を合わせれば1人よりも高い能力を発揮できるということです。O'Reillyはこれを「インテリジェンス集合体の活用(leveraging collective intelligence)」と呼んでいます。Web 2.0では、こうした環境を生み出すツールを構築することが必要です。

Webはその道をはっきりと指し示しました。今や大規模な組織はその道をたどり始めています。

Enterprise 2.0とは

Enterprise 2.0という用語は、2006年春にハーバード大学大学院経営学研究科のAndrew McAffee助教授によって考案されました。6ドル50セントでPDFを購入すれば、MIT Sloan Management Reviewで発表されたMcAffee氏の論文を読むことができます(正直なところ、その内容は2.0というにはあまりふさわしくないように思いますが、ここではそれは置くとしましょう)。

本質において、企業はテクノロジと考え方の両面でWeb 2.0を取り入れ、それをビジネスに適用し始めています。

議論を進める前に、ここで現代の組織が持つもう1つの不幸な特性に触れておきましょう。それは、知的財産という思考方法です。「Enterprise 2.0」という名前は、実は著作権で保護されています。Wikipediaのその項目には、次のように書かれています。「Enterprise 2.0は、Birch Ct. Oakland, CA 94618のChang, Alvin K氏が所有する米国のサービスマーク(シリアル番号:78893454)です。これは2006年5月25日に登録され、ビジネスおよび教育関係の会議の諸分野、およびEnterprise 2.0に関連した教育サービスの提供に適用されているようです。」

こちらも2.0とは思えません。

言葉の問題はさておき、今、実際に何かが起こっています。大規模企業において、ソーシャルネットワーキング、ブログ、ウィキのようなテクノロジが共有やコラボレーションに利用され始めるのは、時間の問題に過ぎませんでした。これらのツールは、知識の収集に活用されつつあります。また、これらのテクノロジを使用して、リアルタイムで顧客との情報交換が行われています。

Webの速度とコラボレーティブな能力を活用することは有益だと論じられています。また、それは幸先のよい始まりに過ぎないと言われる場合もあります。

それは、オンデマンドサービスを提供するアプリケーションを作成する能力でもあります。仮想化のようなテクノロジを応用して、より柔軟に効率よくITインフラストラクチャを利用することです。また、魅力ある経済的なモデルと制約のあるライセンスからの解放のために、オープンソースソフトウェアを使用することです。

定義の拡張

Enterprise 2.0について、すでに現在の定義の先を見据えている人物の1人は、Vinnie Mirchandani氏です。

Mirchandani氏は、以前はGartnerのアナリストで、またPriceWaterhouseCoopers社のシステムインテグレータでした。現在、彼はコンサルタントとして、顧客のCIOと(たいていは)プロプライエタリの大規模ソフトウェアベンダとの取引を仲介しています。彼は、自分の本業は経済的理由から「ベンダを叩きのめす」ことだと説明しています。

「プロプライエタリベンダには非常に厳しく対応しています。」と、彼は述べています。

Mirchandani氏はブログを始めて18カ月になり、現在、2つのブログに書き込みを行っています。1つはDeal Architect、もう1つはNew Florence, New Renaissanceです。

Mirchandani氏が、提供されているEnterprise 2.0の定義に初めて疑問を呈したのは、Deal Architectブログにおいてでした。彼は、Web 2.0の市場セグメントであるソーシャルネットワーキングは、これらのテクノロジの採用を企業に迫っており、それがEnterprise 2.0になるのではないかと指摘しました。しかし、Mirchandani氏は、それらは企業の1つの側面に過ぎないと考えています。

彼は、CIOがWeb 2.0を注視しており、それを生み出す技術革新を必要としていると考えています。「しかし、彼らはミドルウェアやセンサ(RFID)で進行していること、またモバイルアプリケーションがどのように世界を変えるかに関心を持っているだけのようです。彼らは一連の技術革新を検討していますが、私にとっては、Enterprise 2.0の定義は必ず包括的でなければなりません。」

彼はほかのことも指摘しました。

「現行の提供モデル、現行のライセンス供与モデル、現行のシステムインテグレーションのエコシステムなどは、至るところに欠陥があります。」と、彼は述べています。「来るべき企業の姿であるEnterprise 2.0を再定義しようとするなら、Enterprise 1.0の悪しき慣行のすべてを受け入れることはできません。我々は、もっと多くのコミュニティを利用していく必要があります。異なるライセンス供与モデルへ移行していく必要があります。また、ソフトウェアをサービスとして利用していく必要があります。」

Mirchandani氏は、ブログで「600万ドルの男」、Steve Austinに言及しています。

「これは一生に一度あるかないかのチャンスです。」と、彼は述べています。「Steve Austinはひどい事故に見舞われ、もう少しで死ぬところでした。我々は彼の鼻を修復できるかもしれませんが、これは1つのチャンスです。彼の鼻を修復するだけでなく、核エネルギーなどを埋め込むことができます。これはバイオニック企業を生み出すチャンスなのです。」

それは、Web 2.0の個々の要素を導入するというだけでなく、視野をさらに広げた構想です。「それは、企業が考慮に入れる必要のあるもののごく一部に過ぎません。」

彼はブログで、それらの特性(選択肢のサポート、パートナーの幅広いエコシステムの提供、共有の推進、コミュニティの知的財産に関するオープンソーシングのサポートなど)を列挙しています。

「オープンソースは、『我々にはお金儲けをして事業を継続することが必要だ。それはサービスや実装後のアドオンなどによって実現できる。』と世界に訴えるための斬新な方法を示しているのです。」と、彼は述べています。「メンテナンスで95%の利ざやが認められるようなモデルはご免です。」

「ここでは、ソフトウェア業界がどれだけ成熟しているかを議論しています。しかし、我々は依然として、ほとんど略奪的な価格設定を認めているのです。私にとってオープンソースは、理にかなった公正な価格設定の考え方を示しています。」

Mirchandani氏は、例としてサウスウェスト航空を引き合いに出すことがよくあると述べています。それは、サウスウェスト航空の料金が常に最も安いからではありません。サウスウェスト航空は価格が変動せず、くだらないもののために少しずつ出費させて顧客を苦しめることがないからです。それはビジネスのやり方としてはるかに公正だ、と彼は述べています。

「いくつかのオープンソースコミュニティについて魅力を感じるのは、まさにその点です。」

こうした新しい企業構想について、その他の重要な2つの側面は、透明性とコラボレーションです。

「顧客を本当に信用しているなら、自分の周りに壁を作ることなどないはずです。」と、彼は述べています。

Mirchandani氏は、機能停止が何度か発生したあとに、可用時間などのメトリクスを表示するように構築されたSalesforce.comというWebサイトについて述べています。「これはすばらしいと思います。顧客に対してそれを隠す必要がどこにあるというのでしょう。」

Mirchandani氏によると、そのサイトでは、フィードバック用のオンラインユーザコミュニティを利用して、新しい機能に関する顧客の意見を集計する方法も導入しています。「すべてのソフトウェア企業が、何らかの形で顧客の意見を取り入れていることは明らかです。しかし、これは顧客に絶えずフィードバックを促す見事な方法です。すべてのフィードバックが採用されるわけではありませんが、それは企業と顧客の間にある垣根を取り去ることになります。」

同時に、彼によると、顧客のコミュニティも座り込んで次々にベンダを批判するのでなく、さらに進んで、ブログ上で積極的に情報を共有し、オープンに発言することが求められます。

Mirchandani氏のもう1つのブログであるNew Florence, New Renaissanceは、現行の企業ソフトウェアモデルの荒涼とした世界への対応として作成されました。彼は当初、カリフォルニアのWeb 2.0、韓国のモバイルアプリケーション、インドのビジネスプロセスのアウトソーシング、中国の製造業の効率性をめぐって起こっていたことや、オープンソースの状況に着目したと述べています。

「一歩離れて見ると、これは中世の暗黒時代のフィレンツェにそっくりでした。我々はまさに暗黒時代からルネサンスの世界へ踏み出そうとしているのです。明かりを灯してルネサンスを起こすというほど単純な話ではありませんが、移行としてはよく似ています。」

彼によると、彼のCIO顧客の大部分は、支出の80%が20社のベンダの懐に入り、その大半が束縛された価格であるという事実に気付いています。

「そのため、彼らは以前に比べて、オープンソースを検討したり、サービスとしてのソフトウェアを検討したりすることに前向きです。わずかな技術革新でそうしたコストを削減できること、技術革新によって社員への反応性を向上させることができることに関心を寄せているのです。」

「私にとってEnterprise 2.0とは、狭く定義しないとすれば、ビジネステクノロジが現在、ひどい汚名を着せられ、投資回収率が非常に低いということです。」と、彼は述べています。「今や暗黒時代から抜け出し、新しい時代へと踏み出す可能性が開けているのです。」

では、企業がそれを開始する最良の方法についてはどうでしょうか。

彼は、啓蒙はCIOレベルで始めるべきだと提案しています。「オープンソースというのは、CIOが『そう、これがもっと必要だ』と言えば済む技術革新なのです。それは1つの変化で実現できます。」

また、彼によると、CIOはWeb 2.0という現象がMySpaceやFacebookにとどまらないことを理解する必要があります。コラボレーション、透明性、ソーシャルネットワーキングが重要です。この恩恵を受けるには、もっと多くのCIOがオープンになる必要がありますが、次第にそうなりつつあります。

「暗黒時代に生きていることに息苦しさを感じる必要があります。」と、彼は述べています。「暗黒時代に安住していては、何も変えることができないのです。」