クライアントデータベースは、提供サービスのサポート、作業の文書化、およびクライアントの結果の追跡においてきわめて重要な役割を演じます。
「女性用施設の開設を準備する場合、非常に高い優先度が与えられるのは、クライアントデータベースの設置です。 これは、必要なスタッフを揃えるのと同じくらい重要です。」
Chris Budnick氏、プログラムディレクタ、The Healing Place of Wake County
オープンソースに関わる中で、私はfreeなソフトウェア(この場合のfreeとはfreedomのfreeと同義)を作成するコミュニティが今度は、それを利用する私に何かをさせようとしているような気になってきました。哲学的ですが、freeなソフトウェアの作成プロセスそのものが、世界をよりよくするためにソフトウェアを使うよう私を誘導しているような感じなのです。こうした利他的な傾向だけでなく、私には、無料サポート(ボランティアサポート)とともに無償で提供される、ライセンスの縛りのないソフトウェアでは、それが当然の成り行きのように感じられました。それでも、多くのオープンソースプロジェクトを特徴付ける政治と環境、エリート主義とネット上の論争のために、多くの善意ある人々は足を遠ざけています。大体において、私はそうした人々の一員であり、自分の利他的な活力を浪費したくないと考えていました。私は長年、オープンソースとボランティアのプログラマおよびシステム管理者を、非営利事業に利用することを提唱してきました。福祉の拡大に尽くしている組織が、その収入をライセンスやサポートではなく、自らの使命に投入できるようにすることは理にかなっています。
The Healing Place of Wake Countyのボランティアとして、私は成長している非営利事業が相当なリソースをソフトウェア管理に投入できると考えています(The Healing Placeの詳細はすぐ確認できます)。それでも、オープンソースと非営利事業を組み合わせるのは当然のように思えます。資金とスタッフの技術経験が限られているか、ほとんどないような組織に恩恵をもたらすために、オープンソースの力を活用しない理由があるでしょうか。産業界や学会では、以前から、オープンソースはセキュリティとコスト効率の高い安定したソリューションになり得ると認められています。同じ有益な効果を、非営利のコンピュータ環境でも感じることができます。
法的な定義はともかく、非営利組織の目標はコミュニティの好ましい変化を実現することです。金銭は目標ではなく、むしろこの変化を生み出す手段の1つです。にもかかわらず、非営利セクターは毎年、現金と受け取った寄付金から数百万ドルを、数社の巨大ソフトウェア企業のポケットに送り込んでいます。それらのお金を本来の事業に振り向けない手があるでしょうか。
非営利事業に対するオープンソースの利点は、財務面にとどまりません。非営利コミュニティとオープンソースコミュニティのそれぞれの哲学には、いくつか共通した基本理念があります。たとえば、 freeというコンセプトは両方のコミュニティに固有のものです。オープンソース運動では、目標はソフトウェアのソースコードを目に見える状態にしておくことです。ソフトウェアは、プログラマがソフトウェアのソースコードを読み、再配布し、変更できるときに発展し、向上します。
本質的に、非営利グループは組織された方式でfreeを実現します。貧困の圧迫や薬物中毒からの救済でも、他の人間からの解放でも、これらの束縛から自由(free)になるとき、人々はより多くのことを達成でき、よりよい生活を送ることができます。
多数の非営利事業が、使用するソフトウェアをサポートすることにより、オープンソースソフトウェアへの対応から財務上、またはその他の恩恵を受けられます。オープンソースやオープンソース関連プロジェクトを作成し、使用している、ソフトウェア企業に関わる多くの個人が、オープンソースプロジェクトと団体(Open Source Initiativeなど)に財政的支援を提供しています。これらのプロジェクトを支援するには、大金持ちである必要はありません。実は、プログラマである必要もありません。マーケティング、一般の関心喚起、および技術サポートなどは、非営利事業で使用されるプロジェクトを支援する多くの方法の一部に過ぎません。例としてFedora Coreを取り上げましょう。Fedora Coreを電子メールやファイル共有などのためにバックエンドLinuxサーバとして使用している非営利事業は、おそらく数千にのぼります。アイディア、時間、創造性をFedora Coreプロジェクトに提供することで、Fedora Coreを使用している、自分が関心を持っている非営利事業を支援することになります。そうした貢献は、非営利事業とオープンソースの両方にとって強力な支援です。
また、オープンソースは、非営利事業の効率の向上を促進できます。少しThe Healing Place of Wake Countyの話に戻りましょう。そこでボランティアとして働いているときに、私はプログラムディレクタのChris Budnickから、Microsoft Accessで作成されたデータベースについて支援を依頼されました。そのデータベースは構築中でしたが、ChrisはThe Healing Placeが対応しているクライアントとサービスを管理する何らかの方法を必要としていました。私は喜んで支援を引き受けました。残念ながら、データベースの構造に取り組んでいるときに、いくつか基本的な問題があることに気付きました。
第1の問題は、Microsoft Accessをインストールしていなければ、データベースにアクセスできないことでした。第2の重大問題は、Accessの経験を持ったコストのかかるスタッフがいなければ、複数のユーザが互いの作業を上書きすることなく同時に記録を更新できるようなデータベースのフロントエンドを開発する方法がわからないことでした。第3に、MS Accessは空き容量を効率的に利用しているように見えませんでした。わずか数週間のデータ入力のあと、データベースは600 MBというとんでもないサイズに膨張しました。このファイルを開いたり閉じるだけで、デスクトップマシンがロックするか、クラッシュするのが普通でした。もっとよい方法が必要であることはわかっていました。MySQLについて学ぶことにしたのはその頃です。私は、Oracleや他のいくつかのデータベースに関連するシステム管理を行った経験がいくらかあり、より多く知りたいと考えていました。
2002年の秋、私は当時のMS Accessデータベースで使用していたものと同様のテーブル構造を持つ新しいデータベースの構築に取り掛かりました。インタフェースの設計についてはPHPを使用し、The Healing Placeのユーザがすでに慣れていたインタフェースをエミュレートしました。
Client Registration and Services Database(CRSD)の設計は2003年初めに完了し、同年5月1日に稼働しました。当時の私の雇用主であったRex Healthcareから寄贈されたハードウェアによって、The Healing Placeは、Red Hat Linux、MySQL、およびApacheが稼働し、PHPで作成したWebインタフェースを備えた専用データベースサーバを装備しました。データベースのクライアントソフトウェアとライセンスの必要性はなくなり、スタッフはWebブラウザからデータベースにアクセスできました。
データベースがオープンソースであるという事実によって、データベースアプリケーションの変更に大きな自由度が得られました。これは非営利事業にとって大きな効果があります。ケースマネジメントをソフトウェアに合わせるのではなく、アプリケーションをケースマネジメントの手法に合わせて最適化し、適合させることができるからです。最終的には、あらゆる組織が総所有コスト(TCO)や戦略的価値のようなものを考慮する必要があります。ユーザにとって何か不便があれば、それは戦略的価値の消耗とみなされるため、ケースマネジメント手法に合わせてソフトウェアを最適化すると、効率が上がる場合がよくあります。
アプリケーションに変更を加えることができることも、トレーニングコストに対して有利な効果があります。ソフトウェアを導入または交換したときにケースマネジメント手法をすばやく習得できるため、トレーニングコストを削減でき、したがってTCOを引き下げることができます。The Healing Place of Wake Countyの場合、スタッフになじみのあるアプリケーションに合わせてデータベースのWebインタフェースをモデル化したため、新しいデータベースのために必要なトレーニングを最低限に抑えることができました。データベースアプリケーションに対してさらに変更を加えることで、あわせて使用されるプロセスを改善する柔軟性を拡大できました。
安定性について少し議論しましょう。安定性がTCOを削減する方向に作用することはいうまでもありません。それは、組織を強化するための非営利事業の戦略に含めることができます。いくつかの研究がかなり明瞭に示すところでは、Linuxは他の主要なデスクトップオペレーティングシステムに比べて、概して安定性とセキュリティに優れています。2003年に全世界の2500社の企業顧客を対象として実施された調査では、それらの企業の95%以上がLinuxの信頼性をビジネス価値に対する最も重要な貢献と評価しており、その次に調達コスト(89%)を挙げています。ここでも、オープンソースが価値ある提案であることは明らかであり、非営利組織であってもその価値は理解されるでしょう。
非営利事業でオープンソースを使用することの財務面以外の利点や間接的な財務上の利点は数多くありますが、非営利組織にとって、調達コストを削減または解消できるという大きな可能性が存在することは強調する必要があります。The Healing Placeのデータベースについて数字を確認したことはありませんが、私はプログラマ、データベース管理者、およびシステム管理者としてボランティアで時間を提供していることは、いくらかの価値があると考えています。2005年の夏にChris Budnickから受け取った電子メールによると、ケンタッキー州ルイビルのThe Healing Placeでは、同様のシステムに80,000ドルを支出したということでした。The Healing Place of Wake Countyでは、そのコストは0.00ドルです。最近、CRSDは予算が付いてエンタープライズプロジェクトに移行しました。今月にはバージョン2.0が展開され、そのあとすぐにThe Healing Place of Wake Countyの女性向けセンターに第2のインスタンスが導入されます。私は引き続きボランティアとして時間とアイディアを提供し続けています。